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KINGSOFT Internet Security 20 の評価レビュー
KINGSOFT Internet Security 20は条件を満たせば無料で使用できるセキュリティソフトです。条件は、ブラウザのホームページをStartHomeに設定するか、ポップアップ広告を表示するかです。どちらも嫌な場合は、有料版を選択することもできます。ただし、以前は1台版だと2,000円で期間無制限に使えましたが、現在は期間無制限のライセンスがなくなり、1年・1台版が1,980(税込)からと実質的に値上がりしています。
セキュリティソフトとしての保護性能は、決して高くありません。ただ、無料版、有料版のどちらを使用していても、無料の電話サポートを受けることができるという点はメリットとなります。
目次
リンクをクリックするとページ下へスクロールします。お忙しい方は「KINGSOFT Internet Security 20の特徴」をお読みください。特徴を簡潔にまとめています。
KINGSOFT Internet Security 20の特徴
高い検出率をアピールするが・・
KINGSOFT Internet Security 20のウェブページにある受賞履歴では、図のグラフを用いて、99.5%という高い検出率が紹介されています。
確かに高い検出率なのですが、これはKINGSOFT Internet Securityが独自のスキャンエンジン「Blue Chip III」に加え、そこそこ高い性能のAVIRAエンジンも搭載していた、2014年のデータです。現在のKINGSOFT Internet Security 20には、AVIRAエンジンは搭載されておらず、検出率が下がっていることが予想されます。5年以上前のスポット的なデータだけで、KINGSOFT Internet Security 20の検出率が有料ソフトのMcAfeeやトレンドマイクロ、ESETなどよりも高いと判断するのは早計です。
さらに、2015年以降、AV-comparativesなどの第三者機関のテストに参加していません。
無料の電話サポート
KINGSOFT Internet Security 20は、無料のセキュリティソフトなのに、電話サポートまで無料で受けることができます。操作や設定について電話で相談することができます。
実際にサポートに電話をかけてみましたが、タイミングが悪かったのか、20回ほどかけてもつながりませんでした。無料なので仕方がないですが、あまり期待はできないかもしれません。
ブラウザのスタートページがStartHomeに
KINGSOFT Internet Security 20は、KINGSOFTの運営するStartHomeを、Internet Explorer、Edge、FireFox、Chromeといったブラウザのスタートページにすることで、無料、かつ広告なしで使用できます。
これらのブラウザのスタートページを、StartHomeから別のサイトに変更すると、不定期に画面右下にポップアップ広告が表示されるようになります。
以前は、ポップアップ広告が頻繁に出て煩わしかったり、怪しい感じのポップアップ広告が出たりしていましたが、最新バージョンのKINGSOFT Internet Security 20を使用した範囲では、ポップアップの頻度はそれほど頻繁ではなく、広告内容も改善されていました。
有料版の価格がアップ
前バージョンでは、広告なしの有料版でも、1台・1年版が1,000円、1台・期間無制限版が2,000円と非常に安価でした。
しかし、KINGSOFT Internet Security 20では、1台・1年版は1,980円と倍近く値上がりしており、期間無制限版もなくなっています。
新機能
KINGSOFT Internet Security 20の主な新機能について解説します。
ウイルス検索エンジンをアップデート
KINGSOFT Internet Security 20のウイルス検索エンジンは、KINGSOFTが独自に開発した「Blue ChipIV」です。前バージョンの「Blue ChipIII」からアップグレードされて、クラウドウイルススキャン技術により、動作が軽くなっているようです。
ただし、KINGSOFTによる紹介では、動作速度の向上にのみフォーカスされているので、ウイルス検知性能には大きな変化がないのかもしれません。
フィッシング対策協議会と提携
KINGSOFT Internet Security 20では、警視庁やフィッシングサイト対策協議会と提携したフィッシングサイト対策機能を備えています。
このフィッシングサイト対策協議会からの情報提供を受けている会社には、トレンドマイクロやマカフィーなどのメジャーなセキュリティ会社も含まれています。
無料のセキュリティソフトとしては、フィッシングサイト対策協議会と連携する初のソフトとなっています。
毎月3,000件程度のフィッシング詐欺サイトの判定が実施されているようです。ただし、次から次へとURLを変えて登場するフィッシング詐欺サイト対策としては、十分な性能であるかは不明です。実際に、国内外の20サイト以上のフィッシングサイトにアクセスしてみましたが、KINGSOFT Internet Security 20によってブロックされたサイトは一つもありませんでした。
視力保護モード
KINGSOFT Internet Security 20には、新しい機能として「視力保護モード」が搭載されています。
内容は、画面の青みを減らすブルーライトカットと、1時間ごとに休憩を促す休憩タイマーという機能です 。
セキュリティとは全く関係のない機能で、個人的には必要ないと思います。
マルウェア対策性能
KINGSOFT Internet Security 20のマルウェアの対策性能は、”低い”と思われます。
第3者機関による検出率
マルウェアからの保護力を確認しようとする場合、個人でハニーポットをしかけサンプルを集めても、限定的な結果にしかなりません。セキュリティソフトの検証を専門に行っている機関のデータを確認するのが、最も有効であると考えます。ここでは、有名な第3者機関による評価結果を確認します。ただし、KINGSOFT Internet Security 20は最近第三者機関の実施するテストに参加していないので、過去の記録を参照します。
他のセキュリティソフトのテスト結果については、下のリンク先をご覧ください。
セキュリティソフトのマルウェア検出性能の比較
AV-Comparatives
KINGSOFT Internet Security 20のマルウェアの対策性能は、”低い”と思われます。
ここでは、代表的な調査結果として、まず、オーストリアのAV-Comparativesの評価を掲載します。下表のReal-World Protection Testは、Webサイトを閲覧中の実利用環境で、どの程度マルウェアを防ぐかをテストしたものです。2015年以降、テストに参加していないので、残っている記録のうち新しいものから3つを載せています。2014年の3~6月の時期はAVIRAのエンジンを搭載していたこともあり、ADVANCEDの評価を得ていたときもあります。しかし、AVIRAのエンジンを使わなくなってからはAV-Comparativesのテストに参加していません。
2013年8~11月 | 2014年3~6月 | 2014年8~11月 | |
保護率 | 92.6% | 95.4% | 93.5% |
AWARD LEVELS |
AV-TEST
次に、ドイツの独立機関であるAV-TEST.orgの評価結果を確認します。こちらも、2014年までのテストにしか参加していません。2014年の8月と10月の成績は良かったですが、2014年12月のProtectionスコアは3.5ととても低いです。これは、純粋にマルウェアの検出率が平均よりも低かったからのようです。
PerformanceやUsabilityのスコアも重要ですが、高いProtectionスコアはセキュリティソフトの必須条件です。これらの評価を考えると、安心できるかと言われると厳しいです。
2014年8月 | 2014年10月 | 2014年12月 | |
Protection | 5.5 | 5.0 | 3.5 |
Performance | 6.0 | 6.0 | 5.0 |
Usability | 5.5 | 6.0 | 6.0 |
認定 |
※Performance:PCのスピードへの影響
※Usability:誤検出などPCの利便性を損なわないようにする能力
※各項目の最高点は、6点となります
動作の軽さ
動作の軽さは"軽い"と思います。
当サイトでの詳細な動作チェックは行っていませんが、実際に使ってみても、特に重いと感じることはありませんでした。インストールも、アンインストールも非常に速いです。
他のセキュリティソフトの動作の軽さについては下のリンク先をご覧ください。
セキュリティソフトの軽さの比較
AV-Comparatives
AV-ComparativesのPerformance Testsの結果では最高評価のAdvanced+を得たこともあります(2014年)。
2012年6月 | 2013年11月 | 2014年10月 | |
AWARD LEVELS | ー | ADVANCED(★★) | ADVANCED+(★★★) |
AV-TEST
AV-TESTの「Performance」のスコアでも、なかなか高い評価を得ています。
2014年8月 | 2014年10月 | 2014年12月 | |
Performance | 6.0 | 6.0 | 5.0 |
※各項目の最高点は、6点となります
5年ほど前の結果にはなりますが、第三者機関からも軽い評価を得ています。
さらに、新しい検出エンジンを搭載し、クラウド技術を活用することで、動作の軽さが向上していることも期待できます。
ランサムウェア対策
KINGSOFT Internet Security 20には、ランサムウェア対策に特化した機能はありません。未だに猛威を振るうランサムウェアからの保護性能は"低い"でしょう。
ただし、他の無料ソフトの中でもランサムウェア対策を強化する機能を搭載したものはほとんどないので、仕方がないかなと思います。
なお、ランサムウェア対策性能の高いセキュリティソフトを探している場合は、下記の性能比較ページをご覧ください。
セキュリティソフトのランサムウェア対策の比較
ネットバンキング保護
KINGSOFT Internet Security 20のネットバンキング保護の性能は"低い"と思います。
基本的な機能である程度保護できると思いますが、ネットバンキング保護に特化した機能は搭載していません。
ネットバンキングをよく利用される方は、ネットバンキング保護に特化した機能、例えば決済ブラウザなどを備えたソフトを利用されることをおすすめいたします。
各セキュリティソフトのネットバンキング保護技術の評価結果については、下のリンク先にまとめてありますので、詳細はこちらをご覧ください。
セキュリティソフトのネットバンキング保護性能の比較
Web脅威対策
KINGSOFT Internet Security 20のWebの脅威からの保護機能は"低い"と思います。
第3者機関によるAV-Comparativesの評価
AV-ComparativesのWebサイト閲覧中の保護能力を評価するReal-World Protection Tests(上に詳細を記載)には、ここ数年参加していません。第三者機関によるテストに参加していない、という事実も一つの評価ポイントとなるかもしれません。
参加していた2014年のテストでは「ADVANCED」の評価を得たこともありますが、保護率にばらつきがあり、安定感がありませんでした。信頼性に疑問が残ります。
デフォルトではIE以外のブラウザは保護されない
KINGSOFT Internet Security 20のインターネット保護機能は、初期状態ではIE(インターネットエクスプローラー)のみしか保護対象になっていません。Edge、Chrome、FireFoxといった別のブラウザを使用する場合は、ブラウザを追加する必要があります。
無料のセキュリティソフトを使う方がそれほどパソコンに詳しくない場合、セキュリティソフトの設定の部分まで見ずに、デフォルトのまま使用することが多いと思います。その場合、IE以外を使うと保護されていない状態でインターネットを使用することになり、Web脅威にさらされる危険が高まります。
IEの開発元のマイクロソフトが、IEの使用をやめEdgeへの移行を勧めている中で、デフォルトでIEにしか対応していないのは、セキュリティソフトとしてかなり残念な部分です。
迷惑メール対策
KINGSOFT Internet Security 20には、迷惑メール対策機能はありません。
脆弱性対策
KINGSOFT Internet Security 20には、脆弱性対策の機能は搭載されていません。
セキュリティチェックを実行すると、「パソコン脆弱性のチェック」も行いますが、適用されていないWindows Updateなどは行われていません。
ID・パスワード管理
KINGSOFT Internet Security 20には、ID・パスワード機能が搭載されています。
下記のような画面で、パスワードを管理できます。最近は、カード情報やオンラインバンキング情報など管理できる種類が増えているソフトもありますが、KINGSOFT Internet Security 20で管理できるのは、アカウント情報のみ(アカウント名とパスワード)です。IDとパスワードはクラウドには保存されず、PC内にのみ保存されます。そのため、別端末とのID・パスワードの共有はできません。
自動入力してくれないので、設定画面を出して、毎回コピペしないといけません。思ったより面倒です。
ペアレンタルコントロール
KINGSOFT Internet Security 20には、ペアレンタルコントロール機能はありません。無料のペアレンタルコントロール機能を使用したい場合は、Windows Defenderの機能を使用するとよいかもしれません。
その他の機能
不要ファイルの削除
KINGSOFT Internet Security 20には、不要なファイルを検索して、削除する機能があります。
ブラウザ不要ファイル、システム不要ファイル、その他プログラム不要ファイル、SNS不要ファイル、レジストリ不要ファイル、プレイヤー不要ファイル、オンラインゲーム不要ファイルを探して、削除することができます。
PC加速
KINGSOFT Internet Security 20には、メモリを開放することなどにより、PCのスピードを上げるという、PC加速という機能があります。
デフォルトだと、図の右にある「加速ボール」が常に画面の右下に表示されています。これをクリックしても、メモリの開放が行われるようです。
ファイルクラッシャー
重要なファイルを安全に削除することができ、復元できなくすることが可能です。
ただし、どのような方式をとっているのかは不明です。あっという間に削除の処理が終わるので、やや心配です。
操作画面
メイン画面
KINGSOFT Internet Security 20のメイン画面です。
現在のデバイスの安全性を確認できます。
詳細設定を行うには、右上のメニューから「詳細設定」を選択します。
以下に、詳細設定の画面をご紹介します。
「基本設定」画面
KINGSOFT Internet Security 20の「基本設定」の画面です。
基本設定、通知設定、アップデート、右クリックメニュー、その他の項目に分かれており、それぞれ設定できます。
「安全保護」画面
KINGSOFT Internet Security 20の「安全保護」の画面です。
ウイルススキャン、システム防御、インターネット保護、除外設定、エンジン設定のメニューがあります。
以前は、エンジン設定のシステムエンジン起動が推奨にもかかわらず、デフォルトでオフになっていましたが、KINGSOFT Internet Security 20では、デフォルトでONになっています。
なお、IE以外のブラウザを使う場合は、「インターネット保護」の部分で使用するブラウザを使いする必要があります。
「不要ファイル」画面
KINGSOFT Internet Security 20の「不要ファイル」の画面です。
不要ファイルに関する、通知設定と基本設定を行えます。
セキュリティとは直接関係のない機能です。
「PC加速」画面
KINGSOFT Internet Security 20の「PC加速」の画面です。
通知設定ができます。
セキュリティとは直接関係のない機能です。
「実用ツール」画面
KINGSOFT Internet Security 20の「実用ツール」の画面です。
加速ボールの表示に関する設定ができます。
設定を行わないと、常に最前面に表示されます。邪魔に感じるのであれば、最前面に表示のチェックを外すか、加速ボールの設定自体を無効にするとよいでしょう。
サポート
電話の他に、チャット、LINE、メールでもKINGSOFTへの問い合わせが可能です。
問い合わせ窓口:KINGSOFT サポート
電話対応時間:平日 10:00 ~ 13:00、14:00~17:00
価格
KINGSOFT Internet Security 20には、無料版と有料版がありますが、性能や機能に違いはありません。
無料版は、ブラウザのホームページをStartHomeに設定する、もしくはPCの使用中に不定期でポップアップ広告を表示することが条件となります。
ブラウザのホームページをStartHomeに設定したくない、かつポップアップ広告も表示したくない、という場合は、有料版を選択するとよいでしょう。
ただ、以前は1台・1年版は1,000円だったり、期間無制限版もあったため、有料版でも非常に安かったのですが、KINGSOFT Internet Security 20では、期間無制限版がなくなり、実質的に大幅な値上げがなされています。
台数 | 年数 | 価格[税込] |
1台版 | 1年 | 1,980円 |
---|---|---|
3年 | 3,980円 | |
3台版 | 1年 | 2,480円 |
3年 | 5,980円 | |
5台版 | 1年 | 2,980円 |
3年 | 6,980円 |
まとめ
KINGSOFT Internet Security 20は、無料のセキュリティソフトなのに、無料電話サポートまで利用可能です。
数年前のデータをもとに、検出率が高くて性能がよいようなアピールしていますが、現在はAVIRAのエンジンを使わなくなったことで、セキュリティソフトの性能としては、それほど高くありません。
Windows 10をお使いなら、OS標準のWindows Defenderのほうが性能はいいと思います。
実際に使用してみても、セキュリティと関係のない、ファイル削除やPC加速(メモリの開放)、ファイルクラッシャーと言った機能が多いのが目立ちます。最近のPCであればそれほど必要としない機能だと思います。
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